
- 製造業の抱える問題を知りたい
- モノづくりの法則を知りたい
- 古い本だけど今でも通じるの?

『ザ・ゴール』は、初版こそ古いですが、製造業に関わるすべての方に、本質を教えてくれるベストセラービジネス小説です
- 製造業に限らず、モノを作るすべての人のバイブル
- ボトルネックが、モノづくりの能力を決める
- 2026年でも通用する、モノづくりの不変の法則がわかる
はじめまして。普段はメーカーで機械設計をしているベルと申します
この記事は、必ず制約が発生するモノづくりにおける、制約理論(TOC)を学ぶことができる、大ベストセラービジネス小説『ザ・ゴール』の要約になります

アメリカでの初版は1984年ですが、今でも通じる不変の法則・本質を学ぶことができます
その証拠に、世界で1000万部を突破しています
この記事は、私個人の要約・書評になります
作者の意図と異なる解釈があることは、ご了承ください
そのため、この記事を読んだ後は、ご自身で本を読むことをオススメします
君に言いたいのは、生産性なんてものは目標がはっきりわかっていなければ、まったく意味を持たないっていうことだ
ザ・ゴール
【結論】ボトルネックを需要に見合う能力にする

工場の売上向上には、ボトルネックの工程を、需要に見合う能力にすることが重要

ここで言う”需要に見合う”とは、市場の需要より「小さめ」のこと
控えめにする理由は、需要を100%満たす能力だと、需要が減った時に、在庫が増えてしまうため
ボトルネック工程が対象の理由は、その工程が、工場の生産能力そのものになるため
そもそもボトルネック工程とは、求められている能力より、水準以下の工程を指します

非ボトルネックは、求められている能力より、高い水準にある工程のこと
言うは易し、ですが、これを見分けるには、根気や労力が必要な場合が多いです
そのため、ボトルネックとなる工程の能力が低いと、それが工程全体の足を引っ張ることで、工場全体の生産も低下します
とはいえ、ボトルネックは簡単に解消できません
現実的な解決策は、「ボトルネック工程と、どれだけうまく付き合うか?」考えること
まずは、ボトルネックの探し方から、基本的な対策を解説します
- 全行程からボトルネックを見つける
- ボトルネックを前工程に移動させる
- ボトルネックを解消し続ける
全工程からボトルネックを見つける

力仕事になりますが、全リソースをチェックすることで、ボトルネックを探します

自分が工程に詳しくない・ベテランでないならば、すべての工程を確認する必要があります
ひとつひとつの工程で「どこの能力が足りていないか?」を、担当しているベテラン作業員に聞きこむと、より有益な情報が入手できます

データを活用するのも良いですが、データが正確でない場合も多いです
また、全データを集めるのも時間もかかるので、速さを求めるならば、聞き込みがベスト
トラブルの多い工程や、緊急対応が多い工程が、ボトルネックの可能性が高いです
ただ、いつも問題になっている工程は、比較的すぐにわかります
取り急ぎは、それをボトルネックとみなして、対策に取り組むのも有効です
ボトルネックの損失=工場全体の損失

ボトルネックが止まることによる損失は、工場全体の損失であることを理解しましょう
言い換えれば、ボトルネックの能力が、工場全体の生産性を左右することになります

理由は、ボトルネックは、市場の需要に対して能力不足の工程
非ボトルネックは、能力に余裕がある工程を指すため、です
具体的には、ボトルネックが止まると、工場全体が止まります
その場合の損失は、「操業に必要な1時間当たりのコスト × 時間」と、莫大になります

これを避けるには、ボトルネックの問題を、未然に防ぐしかありません
例えば、ボトルネックを通る部品は、事前に欠陥品を取り除く
理由は、欠陥品を通すことは、ボトルネックのリソースを無駄に使うことになるため
もちろん、ボトルネック工程後に、欠陥が発生する場合は、別の手段の検討が必要です
非ボトルネック工程はフル稼働”させない”

逆に、非ボトルネックは、稼働率100%にならないようにします

むしろ、非ボトルネック工程をフル稼働させることは、ボトルネックに悪影響があります
理由は、非ボトルネックを動かすためのリソースは、ボトルネックのリソースを減らすため
次の表は、各工程の稼働できる時間と、市場の需要を満たすために、必要な稼働時間を表したものです
| 工程 | 稼働できる時間 | 需要を満たすために必要な稼働時間 | 余剰時間 |
|---|---|---|---|
| ボトルネック | 100時間/月 | 100時間/月 | 0時間 |
| 非ボトルネック | 100時間/月 | 70時間/月 | 30時間 |
この時、非ボトルネック工程を、70時間よりも長く動かすと、工場全体の効率を下げることにつながります
理由は、余剰在庫が増えるため
そのため、極端な話、非ボトルネックの稼働率が10%でも問題なしとしてOK
ボトルネックの稼働率を、100%維持できるならば、他の工程はまったく動かさなくても良いのです
みんながいつも働いている工場は非常に非効率的だ”
ザ・ゴール
非ボトルネックの使用レベルは、それ自体の能力ではなく、他の制約条件によって決定される
ザ・ゴール
リソースを使用することと、リソースを活用することは別だ。 『リソースを活用する』とは、目標達成に向かって工場を動かすためにリソースを使うことであり、一方、『リソースを使用する』とは、単純に機械や装置のスイッチを入れたりする物理的な作業のことで、利益が出ようと出まいが関係ない
ザ・ゴール
”最高の工場”は少し能力不足

最高の工場とは、需要に対して、やや能力不足の工場を指します
能力不足にする理由は、需要を上回った時の余剰在庫で、管理コストが増えることを防止するため
例えば、理想的に見える、いつでも・どれだけ大きな需要に耐えうる工場には、大きな生産能力が必要です
しかし、需要が少しでも減ると、在庫が発生します

在庫品は、掃除やメンテナンスの維持コスト(業務費用)が増えるため、業績悪化につながります
”業務費用”とは、在庫をスループット(利益)に変えるために、費やすお金のこと
完成品在庫の管理コストも、業務費用になります
ここで、大半の企業は、配置転換や人員削減で、リソース最適化を行います
しかし、生産を減らすために人員削減しても、業務費用(人件費)の削減でしかありません

ここで、生産量は減らないのがポイント
機械に頼って生産しているほど、人が減っても、部品の生産量はあまり減りません
結果、在庫は増え続け、業務費用(管理コスト)も増加することで、スループット(ここでは利益)が減ります
需要不足のときでも利益がプラスにするには、需要より少し能力不足な工場がベストなのです
人を働かせることと、利益を上げることは別物
ザ・ゴール
ボトルネックを前工程に移動させる

ボトルネックを見つけたら、その能力を調整・改善します
特に、可能な限り、前工程の先頭に近づけること

モノづくりでは、決まった工程順が求められるため、順番を変えるのは難しい…
ですが、本質的に、前工程に持ってくることは可能
例えば、ボトルネック工程を通る部品が、できあがるまで必要な時間を逆算
その時間から、事前にボトルネック工程を通る部品の、準備をしておく
理由は、後工程ほど、前工程の”ブレ”が積み重なり、吸収するには、より大きな処理能力が必要なため
さらに言えば、工場の生産能力を考える時は、各工程の前後関係や、順番が重要です

逆に工場の生産能力は、各工程を区別して見ることには、意味がありません
より具体的に説明すると、各工程には、”従属事象”と”統計的変動”があるため、順番が重要になります
- 従属事象:
ある事象は、その前に起こる事象に依存していること - 統計的変動:
人の歩く速度など、完璧に正確な数値を決められないことを指す
工程を経るごとに、”従属事象”と”統計的変動”が積み重なるため、後工程ほど、その影響を大きく受けます
そのため、工場の能力を決定づけるボトルネック工程は、前工程にすることで、求められる処理能力を最小化
結果、稼働時間の最大化を実現できます

ほかにも、ボトルネック後に欠陥品が出ないよう、手順や管理体制を整える
または、そもそも「ボトルネックを通すのが必須か?」検討するのも有効です
工程として必須ならば、機械を追加して、能力を増やす
もしくは、外注できるならば、ボトルネックの能力強化と同じことなので、工場の能力も向上します
それぞれのリソースの真の生産能力とは、工場の中でそれがどの位置におかれているかによるのだ。
ザ・ゴール
ボトルネックを解消し続ける

最初のボトルネックを解消できたら、次は新たなボトルネックを解消します

次のボトルネック解消は、工程に限らず、調達やマネジメントなど、制約のある問題に取り組みます
理由は、ボトルネックは常に存在し続けるため
例えば、現状のボトルネック工程を解決できても、ボトルネック工程が止まるリスクが残ります
または、売上を上げるには、そもそも需要が不足しているかもしれません
しかし、工場の潜在的なボトルネックや、工場以外のボトルネックも、本書の手法で解決できます

『ザ・ゴール』の教えは、制約が存在する条件ならば、必ず効果があるため
あらゆる事象で、”ボトルネック”を見つけて解決する手法は、有効です
ボトルネックは常に存在し、変わり続けるため、解消し続けることが重要です
一方で、ボトルネックを解消した結果、他の工程がボトルネックになったように見える現象には注意が必要
例えば、ボトルネック部品の完成を待つ間、非ボトルネックの在庫が多くあるように見えます
基本的に、ボトルネック部品の製作に、必要な部品を待つ時間が長いです
一方、非ボトルネック部品は、組立段階で、ボトルネック部品を待つ時間が長いです
結果、ボトルネックはフル稼働しているにも関わらず、非ボトルネック部品の在庫が多く存在するタイミングがあります
しかし実際には、ボトルネック部品の完成が、遅いことが原因です
真の制約条件は機械なんかじゃない。ポリシーなんだ。
ザ・ゴール
トライ&エラーが大切

ボトルネック対策はトライ&エラーを繰り返すことで、よりよい工場の実現につながります
理由は、ボトルネック対策は間違えやすいため
対策後すぐは、ボトルネック工程の効率が上がるように見えても、非ボトルネック工程に悪影響を及ぼしていることが、よくあります
例えば、ボトルネック工程での作業を円滑にするために、作る部品の優先順位を調整します

この場合、ボトルネックが変化したと感じます
しかし変わったわけではなく、ボトルネック対策が、非ボトルネックに悪影響を及ぼした、というのが実態
しかし調整の結果、非ボトルネック工程で部品が滞るようになり、最終的に納期遅れ発生…
この場合、ボトルネック工程における、部品の優先順位付けが誤っていることになります
この時点で、すぐに改善することで、納期遅れをリカバリーします
ボトルネック解消には、トライ&エラーを繰り返し行うことで、改善し続けることが効果的です

一方で、非ボトルネックの効率を下げることで、ボトルネック(工場全体)の効率が上がる場合もあります
それこそ、非ボトルネックの工程で、効率向上のためにしていたことが、ボトルネックの負荷を上げることにつながっていることもある
一、誤ったポリシー、つまり制約条件をすばやく見つけ出す。
ザ・ゴール
二、副産物として破壊的な問題を引き起こすことのない新しいポリシーを策定する。
三、社内から抵抗があっても、これに屈しない導入計画を構築する。
ボトルネック解消は、利益を出すため

そもそもボトルネックを解消する理由は、企業の目標である”お金を稼ぐ”ためであると認識します
理由は、”お金を稼ぐ”ことを前提に、工場の能力指標が定義されるため
実際の、能力指標は、すべてお金をベースに考えられています
- スループット
→販売を通じてお金を作り出す割合
モノを生産できても、売れなければ”スループット”はゼロ - 在庫
→完成品だけでなく、生産途中のモノや原材料、作りかけの部品も含む
販売する完成品を作るために、投資したすべてのお金が”在庫” - 業務費用
→”在庫”をスループットに変えるために、費やすお金

労働により付加価値を得たモノでも、売れなければ”スループット”ではない
理由は、「これは経費か?投資か?」判断するため
以下、例 従業員の時間は業務費用 工場の機械は、減価償却は業務費用 投資して買った機械の価値が残っていれば、売れるので在庫になる
「企業の目標は利益獲得」と単純にすることで能力指標もシンプルになることで、あらゆる要素を簡単に評価できるようになります
たとえば、新しい製造プロセスを可能にする知識を得たとしよう。それが在庫をスループットに変えることのできるものであれば、それは業務費用だ。特許や技術ライセンスなどのように、売るための知識であれば在庫になる。
ザ・ゴール
”利益を出す”には全体最適化を目指す

組織で”お金を稼ぐこと”を実現するには、全体最適化が必須

逆に部分最適化は、お金を儲ける観点ではマイナスになります
理由は、部分最適では在庫が増える
または、ボトルネック工程の人手不足が起きる恐れがあるため
例えば、部分最適化により、非ボトルネック工程が、常に稼働できるようになったとします
しかし、ここでそこまで必要のない部品を作っていたら、ムダな在庫保有につながります

在庫は保有するだけでコストがかかるため、少ない方が良いです
在庫があれば、すぐに部品が必要な時は助かります
が、ボトルネックとなる部品でなければ、そんなときは来ません
効率よくお金を稼ぐには、工場全体の最適化が必須
そして、工場全体の最適化は、ボトルネックの部分効率を最大にすることで、実現できます

スループットとは、販売を通じてお金を作り出す割合のこと
モノを生産できても、売れなければスループットはゼロ
パフォーマンスを評価する方法は確かに必要です。ただし、評価のための評価であってはいけないのです。
ザ・ゴール
まとめ:製造業で働くすべての人に薦めたいビジネス小説

- 製造業に限らず、売上向上にはボトルネックを見つけて、解消し続ける
- 需要に対して、供給が少し不足した状態である、理想的な工場を目指す
- ボトルネックと非ボトルネックの区別に注意する
工場の問題解決・売上向上には、ボトルネックの解消が最優先
また、ボトルネックは言い換えれば、「モノを作る制約条件」のこと
この制約条件は新たに発生し続けるため、従来の対策も見直し続ける必要があります

制約条件が新しく発生するのは、状況が変わることによるため
言い換えれば、いままでの経験に頼ることはNGです
対策や推測は、いままでの常識を打ち破るような考え方をする必要があります
さらに、その対策が他の致命的な問題を起こさない必要もあります
連続して制約条件が発生し続ける、難しい局面の対処法を、本書では、物語形式で学ぶことができます
次々と発生する制約条件を解消し続けることで、製造業で活躍するためにも、『ザ・ゴール』を読んでみてはいかがでしょうか。

一方で、『ザ・ゴール』では主人公の家庭崩壊の話も並行して書かれています
仕事に熱中するあまり、人生の本質的な目的(ゴール)も見失わないようにすることも暗喩されています
皆さんも私も、くれぐれも家庭や自分を後回しにしないように、気をつけましょう
- 機械に限らず、ボトルネックを見つけることを優先する
- 需要に少し満たないレベルを目指す
- ボトルネックを改善し続ける
生産的であるということは、自己の目標と照らし合わせて何かを達成したということなんだよ。違うかい
ザ・ゴール