機械設計1年目の過ごし方~重工メーカー機械設計の実体験より~

Career-キャリア

機械設計1年目って実際のところ何をするの?

そんな疑問に、重工メーカー勤務で新卒から現在まで機械設計をしている自分なりにお答えしていきます。

  • 新年度を迎えて新入社員になる方
  • 設計配属が決まっている方
  • これから機械設計を目指そうとしている方

はぜひ参考にしてみてください。

また、この記事では知っておいた方が良いことを紹介するというより、これから”どのような姿勢でいるべきか”をお伝えしていきます。

そこで実際に重工メーカーで機械設計をして、「自分の1年目はこんな感じでした」という情報から、

ベル
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1年目はもっとこうしておけばよかったかなぁ

と感じたことを書いていきます。

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新入社員研修編:自分が担当する製品説明だけはしっかり聞いておこう

私の入った会社では全社員での新入社員研修と、その後勤務地別での研修がありました。

最初の新入社員研修はビジネスマナーがメインだったので適当に流しておけばよかったのですが、その後の勤務地別研修では各部署が実際にどのような仕事をしているのか、例えば設計部署であれば、その部署の製品説明と具体的にどのような仕事をしているのかまで説明されました。

私は入社後もまだ学生気分が抜けておらず、講義中に頻繁にうとうとしたり研修にあまり身が入っていなかったのですが、自身が担当することになった製品の説明だけは真剣に聞いておけばよかったと後悔しました。

というのも、部署配属された後は設計の仕事をするというのに、自身が設計する製品についての理解が浅いとはっきり言って仕事になりません。

せめて研修の内容くらいは把握しておかなければ、配属後に覚えなければならないことが多すぎて、なかなか仕事が前に進まずモチベーションが一気に下がります。

私の部署では細かい説明は抜きにして、とりあえず仕事を振ってみるというやり方が主流で、配属直後の私もその例に漏れず、名も覚えていない部品を出図する仕事を振られました。

いま思えば「わからないのは当たり前だろうけど他の人に聞きながらやってみて」という意図があったのかもしれませんが、配属直後の私にはそんなことは読み取れず、どうすればよいのか本当にわかりませんでした。

私は人に恵まれたため、聞きやすい先輩にわからないところを聞くことができましたが、もともと小心者の私にとっては忙しそうに働いている先輩に大したことない質問をするのは正直気が引けました。

質問が大したこともなければ、さらに量も多いとなると、相手が新入社員であっても自身がその質問をされた時には少しはうんざりしてしまうと考えたのです。

また、私の質問の中には新入社員研修で説明されたような内容も多くありました。

そうなると「研修で説明したこと聞いてないな」と思われかねません。

実際にそう認識されていなくても、自分自身がそう予測してしまったら会社に行くモチベーションも保ちにくくなります。

会社の満足度は人間関係に大きく依存しているので、自分自身が会社での人間関係に不安を抱えたままでは働きにくくなります。

そういった面でも研修では、特に自身の担当する製品だけでも真剣に聞くことをおすすめします。

一方で、もしわからないことがあれば自分の気が済むまで聞きまくった方が良いです。

新人扱いしてくれている間だけしか、どんな質問をしても答えてくれない。というわけではありませんが、自分としても「こんな質問するのはちょっとな…」と気が引けてくるようになってしまう方もいるかと思います。

ただどんな状況であっても、積極的に質問する姿勢でいる人の方が会社でも活躍されている方は多いですし、後々困らないためにも今のうちにわからないところは潰しておくと楽になっていきます。

それが例え無限に続くとさえ感じる量であっても、5年10年経てば「あの時聞いておいてよかった」と感じる日が来ます。

工場実習編:自分に関わる製品はできるだけ見て、触って、組立までさせてもらおう!図面もできれば見ること!

メーカー就職ならばほとんどの方が経験する工場実習ですが、多くの企業では1か月から、長くて1年程実施される企業もあります。

しかし私が新卒入社した時は現場研修は1週間のみ。さらにタイミングが悪く自分が今後担当する製品の製作に関わることができませんでした。

そのため工場実習で自分の担当する製品に関われる場合には、

  • 実物をよく観察する
  • 実際の部品に触れたり、持ったりする
  • できれば組立・分解までする

以上3つのことをおすすめします。

理由としては、自社製品に嫌というほど触れて、理解を深める機会は工場実習を逃すとほぼないためです。

現場から少し離れた部署配属になると、積極的に現場に出向いたとしても、1か月以上毎日1日中現場にいる機会はそうそう訪れません。

この機会を逃すと、

  • 自分が関わっている製品がどのような形状・質感なのか?
  • どうやって組み立てるのか?
  • 実際に動くときの音や振動はどのくらいか?

といった、実際の製品に触れる時にしか体感できないことを知らないままになってしまいます。

これらの体験は、実際に設計するときの強度感覚や組立可否の想像をする際に「このくらいの重さなら人がなんとか組立できそうだな」「強度計算も念のためするけどこのくらいならまあ大丈夫だろうな」といった感覚的な基準を身に付けることができ、実務をする上で非常に役に立ちます。

ただ、より一般的な量産品の場合は工場実習で自分が関わる製品の組立をする機会はそこまで珍しくはないと思います。

そこで、より具体的に「やっておけばよかったなぁ」といま思うことは、可能であれば図面を確認してから工場実習に挑むことです。

理由としては、次の3点になります。

  • 図面を読む勉強になる
  • 図面と実物の違いを体感することができる
  • 読むのが難しい図面の理解ができる

現代の機械設計において最も重要なものは図面です。

3DCADもかなり一般的に使われるようにはなってきましたが、やはり製作物の情報共有をする上で図面が必要ない場面というのはまだ一般的ではありません。

そのため、機械設計者に図面を読む力は必須であり、自分の製品の図面を読むことができないのは致命的です。

とはいっても、図面を読むのは意外と難しいです。

機械系の学科に属した大学を出ていても、図面を読む機会は設計者に比べると圧倒的に少ないため、入社直後からいきなり”図面に問題がないことを確認して出図する”というのは少々無理があります。

しかし企業側としてはそんなことは知ったことではないため出図業務を任せてきますし、図面の教育を行ったとしても、基本を教わったあとは実践経験を積む必要がある側面が強いです。

また、図面の元となった3Dモデルを参照したら確かに図面を読む助けにはなりますが、3Dモデルも実物と形状が異なる箇所がある点や、表示にも限界があるためやはり実物に接することでしか得られない情報もあります。

そのため、図面内容を理解する上では図面と照らし合わせながら実物を確認するのが手っ取り早く、かつ最適です。

図面と実物を照らし合わせることで、図面で表現されているものが実際にどのような立体感・質感になるのか理解することができます。

また複雑な図面の場合、図面から読み取れる情報だけでは図面初心者の方にとっては形状を想像することは不可能に近く、さらに3Dモデルを確認しても細かい形状まで把握するのは困難なこともあります。

ベテランの設計者であっても、初見で実物の形状を詳細に想像することは困難な程です。

そのため、図面初心者の方は事前に自分が読めない図面をとにかくピックアップ→実物と照らし合わせて読み解くことで、図面内容を先に理解しておくことをおすすめします。

工場実習の際に現場に合った部品でわからないところをメモしておき、後でまとめて確認するやり方でも問題ないとは思いますのでご自分に合った方法で図面と実物を照らし合わせてみてください。

図面を扱う仕事を始める方には「図面ってどない描くねん!!」という本がおすすめです。これ1冊あればまず大半の図面に関する悩みは解決します。

私が大学生の時に製図の授業はあったのですが、内容が不十分で教科書もなぜか教授がコピーしたものしかなく、入社してからそれなりに苦労しました。

しかしこの本を片手に図面を読めば、ほとんどの表現や書き方の意味は理解できました。

”図面って、どない読むねん!”もありますが、個人的には”図面って、どない描くねん!”の方が内容がまとまっていて使いやすいためおすすめです。

またこの本でカバーされていない内容が図面にある場合は、その会社の過去の不具合や後工程からの要望で変更されていることもあるため、わからないところは先輩や上司に聞いてみましょう。

また製図方法はJISで規定されていますが、その内容にそぐわない表現になっている図面はこの世にまだ多く存在しています。

製作メーカーが旧規格の表現に慣れていたり、変える必要性がない場合には図面を変更する手間も考慮してそのままになっていることもあります。

特に重工メーカーは昔から変わらない部品を作り続けるため、図面も変えていないことも多いです。

上記で紹介している本や、設計便覧に旧JIS規格との対照表がありますので必要な方は購入することもおすすめします。

部署配属編:わからないことは先輩、上司に聞きまくる!どうにもならなければ会社のフォルダや書物を漁りまくること!

機械設計に限った話ではありませんが、配属直後はとにかくわからないところだらけです。

自分でわからないところを調べるのも重要ですが、少し調べてわからなければ直ちに先輩や上司に聞きましょう。

昼ごはんの食べ方、飲み物の調達、事務用品の場所、フォルダの場所、計算書の使い方、officeソフトの使い方、文献の場所、工場の場所、専門用語の意味、略語の意味etc…

とにかく何もわかりません。あなたがわからないことは先輩や上司も入社直後は知らなかったことですので気兼ねなく聞いて下さい。

また、聞きすぎて多少嫌な顔をされてもうまく流す、もしくは図太くいることができるようになりましょう。

ただ無理はしないように。人間にとって最も重要なことは仕事をできるようになることではなく、心身健康でいることです。

一方で、同じことの聞きすぎには注意しましょう。教えても覚える気がないとみなされると、その後の会社での居心地に悪影響を及ぼしかねません。

積極的に学ぼうとする姿勢をみせていれば問題ありませんので、努力している姿勢を示していきましょう。

本来は会社側が新入社員や中途入社の方がわからないようなことを資料にまとめて誰でも見ることができるようになっているのが理想とは思いますが、実際にはそこまで余裕のある企業は少数派です。

あきらめて自らが学び、そういった資料をまとめて自分から全員に共有することをおすすめします。

私はそんな企業に失望してあらゆるマニュアルや説明書、ファイルの場所など資料としてまとめて作り上げましたが、割と好評で上司からの評価も良くなりました。

また、自分が配属された部署のメンバーも異動してきたばかりで、少し深い質問をしたら相手もわからない・もうわかる人がいないという状況もあるかと思います。私がそうでした。

この場合は他の人間に頼ることもできないため、自分の所属している部署で使用しているフォルダがあるならば、そこに大量に保管されている、今まで使用されてきたファイル・データすべてに目を通すことをおすすめします。

そのファイルすべてに目を通して、今まで自分の部署でどのようなことがされてきたのか、どのような作業をしてきたのかを把握するだけでもだいぶ学べることがあります。

フォルダがなければ、参考資料が眠っている書庫に通うのもおすすめです。

結局のところ、我々のような雇われは、他の人間にできた仕事をさせられることの繰り返しです。

それが企業に属して、決まった部署でやる仕事となれば、見た目は全く異なる仕事でも本質的には同じことの繰り返しである可能性が高いです。

そのため、今までの人間がしてきた仕事の残骸が転がっているフォルダは、これから自分が行う仕事の素材になり得ます。

この素材をもとに、何とか振られた仕事を形にして上司に見てもらい、完成度を上げていくというのが、あまり他の人に頼ることができない状況での仕事の一つのやり方ではないでしょうか。

私はそのやり方しか知らないため、他にもっと良い方法を見つけることができたらご自分の信じた方法で仕事をしていけばよいと思います。

また、自分が振られた仕事に対する成果物は、上司にはできるだけ早めに見てもらうことをおすすめします。

「ある程度形になってから…」というよりは、形にする前の計画書の段階で見てもらう方が、後戻りを少なくできます。

特に新入社員の方であれば、上司の考えている仕事の成果物と一致しないことが多いですので、早めに軌道修正してもらうことで、無駄をなくして残業しないで済むようにいましょう。

まとめ

  • 新入社員研修では自分が担当する製品説明だけはしっかり聞いておけ!
  • 工場実習では自分に関わる製品はできるだけ見て、触って、組立までさせてもらえ!図面もできれば見ろ!
  • 部署配属後にわからないことは先輩、上司に聞きまくれ!どうにもならなければ会社のフォルダや書物を漁りまくれ!

以上3点がこの記事でこれから機械設計を仕事とする方に伝えたいことでした。

これだけでは足りないくらい「あの時こうしていれば…」ということもたくさんありますが、それは後日また別の記事で書いていきます。

これから社会人として機械設計を始める方、異動・中途入社で機械設計をすることになった方は、おそらくわからないことが非常に多い環境になるかと思います。

用語、計算の考え方、会社システム等、いままでと大きく環境が変わり「なんでこんな無駄なことばかりするんだ」と感じる場面も多く、負荷の高いストレスを感じる機会が多くなります。

業界柄、機械設計は残業でなんとかする文化が根強く残っているところも多く、早く帰りたいのに残っている人が多くて帰りにくいといった会社もあるでしょう。

しかしそこは自分を強く保って定時で帰り、心身の健康を確保しましょう。

少なくとも新入社員の間は定時で帰ることを強くおすすめします。

私も残業はほぼ毎日してしまっていて何か言える立場ではないのですが、個人的な意見としては本来会社は定時で終わる仕事だけで何とかしていくべきと考えています。

それができないならば、某最大手自動車メーカーのように「このくらいの残業はすることになるからよろしく」と明示して、残業しなくても残業代も支給され、残業したらその分の残業代も出る制度にすべきです。

この記事で書いた内容はあくまでも仕事をするならばこうした方が良いと書いただけであり、ご自分の心身に異常が出る前に早めに休むか転職することを第一優先に考えるようにしましょう。

ただ、今後のキャリアを考えたうえで、「今は自分に負荷をかけるべき時」と判断したならば多少体に負担をかけてでもやりきるべきです。

早いうちに負荷の高い仕事をしている方は、そうでない方と身に見えて差が付くというのは事実ではあります。

また負荷の高い仕事で、かつ個人では実現しえないような仕事。例えば海外駐在なんかは、経験できる企業はそう多くはありません。

そういう機会が訪れたときに、なにも知らず・英語が喋れないことも考えずに自ら手を挙げるくらい勢いのある人の方が、昇進していますし、結果も残しています。

仕事がどうしても終わらない方には「なぜあなたの仕事は終わらないのか」という本がおすすめです。

この本で紹介される仕事のやり方は機械設計にも通ずることがあり、私も残業時間を2時間/日くらい減らすことができるようになりました。

ちなみに作者はCADの発案者で、我々機械設計者にも縁のあるすごい方です。

番外編:最初の新入社員研修は不要?

”新入社員研修編”で、最初のビジネスマナーなんかの研修は適当に流しておけばよいと書きましたが、その意図についてここで書いていきます。

確かに多くの社会人にとって、名刺の受け渡しや電話の受け答えがしっかりしていてビジネスマナーが身に付いている方が好ましいです。

しかし正直なところ、機械設計者として働いてそれらが重要だと感じた場面はいまのところ一度もありません。

先輩や上司の真似をして名刺を渡して電話を受けることができれば十分です。

営業職や、他社の方と多く接し、個人の評価が仕事の成果に直結する業務内容ならばかなり重要とは思います。

ただ社会人1年目の機械設計者にとっては、ビジネスマナーよりも本当に重要なことが他にあります。

というよりも、他に優先すべきことがあるというのが正しい表現になるかと思います。

機械設計者にとって第一に優先すべきは自らの技術力を挙げることです。

製図能力、4力の習熟度、製造ミスや事故が発生しないような設計ができる技術力を挙げることが自らの成果に繋がります。

機械設計の仕事は減点方式のため、損失を出さないような設計にすることが第一優先です。

そのためには、ビジネスマナーを覚えるよりも会社にある技術資料を覚える方がはるかに成果に繋がります。

少なくとも、我々機械設計者は他社に気に入られることはそこまで重要ではありません。

もちろん人に好かれる方が仕事を円滑に進めることもでき、コミュニケーションを積極的に行うことでミスをなくしていくということも重要です。

ただ技術系の方であれば、他社の方とのコミュニケーションをしっかりするよりも、自分の会社の技術について学んでいくことの方が優先した方が良いと考え、適当に流しておけばよいと書かせていただきました。

コミュニーケーション能力も後々必要にはなってきますので、おろそかにしても良いというわけではありませんが、機械設計者の方ならば、まずはご自分の技術力を挙げることをおすすめします。

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