JISやASMEといった世界各国の技術に関する機関が、数多くの材質に関する規格を定めています。
S45C,SS400,SUS304,etc…
相当材も区別したら、数えきれないほどの材質がこの世には存在します。
しかし重工メーカーでは、こういった規格材では満足することができない場合があります。
私の属している企業の例であれば、
- 炭素量は規格されている数値よりも少ないものにすること
- 硬度はHRC~以下にすること
といったように、規格では満足することができない仕様が頻繁に到来します。
そのような場合に備え、その企業オリジナルの材質を規定して、それを標準材料にしている場合もあります。
この記事では、そういった企業毎に定めているオリジナル材質について話していきます。
そもそもなぜ規格材料ではだめなのか?
規格材料ではダメな理由はメーカーごとに様々ありますが、
- 規格の材料よりも高品質なものを求められているため
- 使用環境に合わせた材料にするため
といった場合があります。
例えば、「この部品だけは絶対に壊してはならない!」といった設計にしなければならないとします。
この時、「規格材では品質が担保できない。」かといって「他の高級な材質を使用するにはコストがかかり過ぎる。」といったケースが発生します。
この解決策として、規格材の要件を少し厳しくすることでコストを抑えつつも品質を確保するために、規格材料ではない、自社オリジナルの材質を規定することとなります。
もう一つ例を挙げるならば、特殊な環境下への対応です。
- 腐食環境
- 低温・高温環境
といった通常の材質では耐えることができないところで使用される部品の場合でも、「高級な材質であれば耐えることができるが、コストが高くなりすぎる」といったケースが発生します。
この時も同様の理由で、規格材よりも厳しい条件、またはその環境には適している機械的性質に指定することでコストを抑えつつ、かつ要件を満たすことができるというわけです。
その企業特有の材料に出会った場合どうすればよいか?
まずはなぜ通常の規格材ではダメなのか聞いてみましょう。
- 「ググっても結果がヒットしない…」
- 「どの本にも載っていない…」
そういった場合はほとんどの場合はメーカーオリジナルの材質です。
皆さんの職場の先輩や上司にでも聞いてみてください。
「過去こういったトラブルがあったから」「自社のほしい性質がJISで規定されていないから」といった回答が得られるかと思います。
新人の時に、自分が図面を出した後に、後工程から「なんで普通の材料ではダメなのか?」とクレームが来た時にはたまったものではありません。
新人の場合、余裕もなければそんなこと知るわけもないので、さらに余裕がなくなってしまいます。
事前に不明点は消しこんでおきましょう。
また他社の場合でも同様に聞いてみることをおすすめします。
なぜ普通の材料ではダメなのか聞いてみると、親切な企業さんであれば教えてくれます。
「こういったトラブルが発生することを抑制するためです」といったような回答を得ることができることもありますし、そういった知識は機械設計をする上でも勉強になります。
まとめ
オリジナル材質は重工メーカーに限った話ではありません。
少しでも特殊な環境に使うような部品を製造しているメーカーであれば、オリジナル材質を規定せざるを得ない場合は多々あります。
そのため、自分がオリジナル材質に出会ったときにはまず「どういったものなのか?」を聞き、知ることが重要です。
材質は、規格されているものも含めて自身が知らないものが数多く存在します。
JIS,ASME,DINといったように、各国の規格で定められていることを考えると、ほぼ同じ材質でも国の数だけ種類があるとも言えます。
これらをすべて知る必要はありませんが、自分が関係する範囲の材質については「なぜその材質を使用しているのか」を説明できるくらいには知っておかなければ、それこそ後工程からクレームが来て、自分の仕事が滞ってしまうこともあり得ます。
またトラブルを未然に防ぐためにも、材質についての理解を深めておくことは重要です。
そのため、規格材・それ以外の材質含め、自分が関わり得る”材質”については事前によく調べておくことを推奨します。